今まで日帰り登山はぼちぼちしていたのですが、今回初めて山小屋泊で白馬岳へ行ってきました。天気など不安要素は多かったのですが、素晴らしい山行になりました。
白馬岳【しろうまだけ】を、最初「はくばだけ」と呼んだのは私だけではないはず。というか、山に興味ない人ならみんなそう読むと思います。
この白馬岳、北アルプスで人気の山の一つで、山頂からの景色の良さ、気持ちいい稜線歩き、登山道に花が一杯など、人気があるのも納得な山です。
登山ルートは猿倉から大雪渓を登るルート、栂池公園からのルート、蓮華温泉からのルートなどあります。
今年は大雪渓が通行止めなので、後者の二択ですが、栂池公園からのルートは途中岩々していて結構大変とのことなので、一番そういったものがない蓮華温泉からにしました。
とはいえ蓮華温泉は東京から行くには一番遠く、長野を越えて新潟になります。
深夜1時に家を出て、蓮華温泉に着いたのは7時前くらい。遠い~。
平日だったので駐車場はまあまあスペースがありましたが、それでも週末は路駐が出るくらい混むみたいです。(露に濡れた路駐の車が何台もありました)
朝7時半前に蓮華温泉を出発。蓮華温泉ロッジの裏から登山開始。
この日の天気は、午前は晴れるけど午後はガスってるか雨が降るか、みたいなあまり良くない天気。翌日も同じような予報です。
去年は夏の高山に登って、山頂に着いた頃にはガスって真っ白け…という悲しい経験が重なったので、いい景色を見たいなら午前中に見るべし、という教訓を得た私。往路の天気はあまり期待せず、翌日の朝の天気がいいことに賭けて登ります。
途中の白馬大池までは、ただただ樹林帯の中を歩きます。
そこまで急登というわけではないのですが、今回は山小屋泊ということもあって、荷物が重い…。(10kgくらい)
しかも湿気ムンムンで、汗が吹き出します。重い、暑い…。
ここが一番簡単って書いてあったけど…書いてあったけどっっ!
登り始めて1時間も経たないうちに、早くも心が折れかかります。蓮華温泉から白馬大池まで3時間かかるというのに、先が思いやられる出だしです。
駐車場付近は晴れていましたが、登り始めるとすぐにガスで覆われて、視界は白。こうなると黙々と進むしかなく、脳裏に「修行」という言葉がよぎります。
休憩多めによちよちと登っていくと、ようやく天狗の庭に到着。
白馬大池との中間くらい。既に出発から2時間ちょっと経過。休憩が多かったせいか、コースタイムよりスローペース。
思ったより全然進んでなくて、大丈夫か…と不安がよぎったり。
天狗の庭あたりでちょっとだけ雲が切れて、周囲の景色が見えました。
また、天狗の庭の一帯は、お花畑となっていて、色とりどりの高山植物が咲いていて、目を楽しませてくれました。
そういえば、この先の白馬岳は「花の百名山」にも名を連ねていたんだっけ。そこでも様々花が咲いているのかと思うと、ちょっと期待してしまいます。
登り続けること、4時間弱。
ようやく白馬大池に到着。
白馬大池の周囲は、チングルマの綿毛が随所で見られました。
これだけたくさんあるなら、もう少し早い季節だと、チングルマの花畑になっていたんだろうな~。見てみたいな。
白馬大池山荘で、お昼休憩。
持ってきたお弁当を食べながら、疲れたな~とぼんやりと周囲を見ていたら、一つの看板が目に飛び込んできました。
「この先、白馬山荘まで標準タイムで4時間かかります」
4時間!あれ、まだそんなにかかるんだっけ?
いつもだったら、もう少しコースタイムをちゃんと調べて来るのに、何故かこの時は、本当にざっくりとしか見てなくて、まだ道のりも半ば未満ということに気づいて愕然とする有様。
確かにこの時間から、白馬岳に向かう人の影は少ない感じ。
あんまりのんびりしてられないな、と、お昼ご飯もそこそこに出発。
今11時半だから、単純計算して山小屋には15時半…に着けたらいいけど、この調子だとそれは難しくて、休憩入れたら16時……?
山小屋は15時までに着くのが基本だけど、まあ無理だから、せめて16時には着いておきたい…。
だがしかし。急ぎたい気持ちはあるものの、足どりはそうはいかず。
一面ガスっていて、その中をとぼとぼと歩いて行く。
とりあえず、山小屋に着くまで雨降らないで―。雷にもなりませんように。
そんなことを願いながら、ガスガスの中歩いていると、ふと先行者が立ち止まった。
なんだろう?と思ってのぞき込むと、
雷鳥だーーー!!!!
人生初の野生の雷鳥に出会えて、一気にテンション爆上がり。
去年は雷鳥に会えるかなと思っていて全然会えなかったので、一際感激。
近くで棒立ちになっている私たちを大して気にする様子もなく、登山道の端に歩いて行って、砂浴びを始めました。
なにこの警戒心の欠片もない鳥は…。可愛すぎる。
そのすぐ上にも、ライチョウが二羽いて、立ち止まっていたオジサマが、雷鳥いますよ~と教えてくれました。
そういえばガスっている時って、雷鳥との遭遇率が高いって聞いたことあるけど、そうなのかも。
ガスっているとつまらないなーと思っていたけど、こんなラッキーなこともあるんですね。
そしてますます濃くなるガス…。
雷鳥を愛でてご機嫌になって、歩いていると、
今度は3羽、2羽は身体が少し小さかったので、親子みたいでした。
すごいな~白馬岳って。こんなに雷鳥に会えるものなんだ。
思いっきり近づきたい衝動を押さえつつ、そーっとそーっと歩いて行くと、雷鳥は大して逃げません。
ある程度近づいたところで写真を撮って、だいぶ満足したところに、対面から団体のおじさまおばさまたちがやってきて、
「あら、雷鳥さん!」
と、カメラ片手に取り囲もうとすると、雷鳥たちはどんどんと遠ざかっていきました。そりゃ逃げちゃうよ…。
一度ならず二度までも雷鳥にあえたぞ!と、更にご機嫌な私。
周囲を見渡せば、雷鳥だけではなく、可憐な花たちがたくさん咲いていました。
登山道の傍らに、こんなに色んな花が咲いているのを見るのは初めてです。
人の手が入ってないのに、植物園かのように、随所で色とりどりの花々が咲きほこっている…。
まさに天空の花畑を歩いているみたい。
下界では見ることができない景色です。
地味に登ったり平らな所を歩いたりで、白馬大池から約2時間かけて、ようやく小蓮華山に到着。ここで大体白馬大池と白馬岳の中間くらい。
頑張れ自分。
左右に白く見えるのは雪です。
白馬と言えば大雪渓というくらいだから、こういったところにも雪が残っているんですね。8月なのに。
そのまま歩き続けていると、時折ふっとガスの合間から青空が見えたりするようになりました。
この時点ではまだどれが白馬岳かよくわかってなくて、地図を見ながら、でもたぶん、もしかしてあれじゃない?みたいな感じで。
だとすると、まだまだめっちゃ遠いやん…。
頑張って歩いて、三国境に到着。
この頃になると大分疲労も重なってきていて、しかも時々よじ登ったりするものだから、体力がどんどん削られていきます。
ただ時折気まぐれのように、ガスの間から青空が見えて、行く先がぱっと見えることがあるんだけど、それがめちゃめちゃキレイ。
あともう少しなんだけど、そこから足が動かなくなるという。
途中で食べきれなかったサンドイッチを食べてエネルギーを補給しながら、最後一登りして、ようやく白馬岳に!
青空は見えてたけど、周囲はガスってて眺望は望めず。
泊まる予定の白馬山荘はこのすぐ下なので、もうほぼ着いたも同然。だけど、疲れた足には少しの下りもキツイ。
ヘロヘロしながら降りていると、山小屋の横で、こちらを見ている人影が。
その人は私たちの姿を認めると、山小屋の中に入っていきました。
そろそろ16時だし、あと誰が来るのか気にしてたんだな~きっと。
なんとか16時前に山荘到着しました。
白馬山荘は800人収容できるすごく大きな山小屋で、この建物の他にも、一号館やスカイプラザというレストラン棟があります。
山の上にこんな大きな山小屋を建てるというのがすごいですよね。
私たちは1号館の2畳個室に泊まったのですが、この日の宿泊客は全体的に少なくて、個室と相部屋がありましたが、相部屋には人はおらず個室もかなり空いていました。
個室は2階なんだけど…。もう2階に上るのさえしんどい…。
布団二枚敷くとぎゅうぎゅうなのですが、プライバシーが保てるのはいいですね。お布団は綺麗なシーツのかかった、しっかりとした羽毛の掛け布団が用意されていて、これを被って寝ると暑かったです。(かといって何も掛けないと寒い)
部屋の窓からは、村営の白馬頂上宿舎と、遠くに剱岳が見えました。
トイレは汲み取り式だけど、概ね匂いがしなくてよかったです。(チェックアウト前に使った時だけ、ちょっと匂ったけど)
洗面所の水はそのまま飲める水ということで、ありがたく汲ませてもらいました。美味しい水を頂けるのは、とても助かります。
夕食は17時からということで、もう少し早く到着していたらスカイプラザのレストランで紅茶とケーキで洒落こもうかと思っていたのですが、そんなゆとりもなく。部屋に荷物を置いて休憩していたらすぐに食事の時間になりました。
食事は隣の建物なので、サンダルを履いていったん外に出ます。
その時山小屋の人が、少し前にここに到着したであろう、ベンチに座っていた人たちに「あと何人歩いてましたか?」って尋ねてました。
もしかしたら、まだ到着できてない人もいたのかもですね。
山小屋の場合は、来てない=遭難?!って可能性も考えますから、山小屋の人も当然気にするわけですよね。
二号館三号館の建物に入って、一番奥まで進んでいくと、食堂です。
途中には個室や談話室、資料館+充電スペース、自炊室などなどありました。
食堂の手前には、自販機がありました。ビール350mlは800円也。
食堂の入り口には、何色の札の人は何時から食事だよ、みたいな看板があったんだけど、今日の宿泊者は少ないらしく、最初の時間帯だけで済むようでした。
食堂に入ると、お兄さんが笑顔で案内してくれます。
もうその笑顔が、まぶしいのなんのって。ピカピカしてて「目が!目がぁ~」と、ムスカ状態に。
食事は、お盆を持って並んで一つずつ取っていくセルフ形式。
お味噌汁とご飯はお代わり自由です。
この日は生姜焼きとおかず色々でした。
味の方は山小屋なので、まあそうだよねって感じですが、山の上で温かいものが食べられるってだけで、ある意味ありがたいです。生野菜も。
部屋に戻って一杯ひっかけてから寝ようかなーと思ったけど、疲れてて、大して飲む間もなく撃沈。
水割りを楽しもうと、頑張ってウィスキーと氷持ってきたのに~。
翌朝。
明け方近くに目を覚まし、窓から外を覗いてみるもガッスガスで、これじゃ日の出は見られないなーと、二度寝を決め込むことに。
6時に館内放送で「朝食だよ~」と起こされ、もぞもぞと着替えて食堂へ。
朝ごはんは食べない人もいるのか、夕飯より人が少ない感じ。
旅館の朝食みたいに、めかぶや納豆がついてくるのにちょっと驚きました。
大きなプレートの上にあるお饅頭みたいなもの、肉まんかと思ったら、本当にお饅頭でした。デザートまでついてるとは。
周囲を見たら朝からこんなに食べられないと、残す人もちらほら。
山登りってハードなのに、小食な人も結構いるんですね。
私はもちろん完食しました。食べておかないと、すぐにお腹すいちゃうので。
部屋に戻って身支度を整えて、チェックアウト。
この時間になると、ガスが晴れて綺麗な青空になりました。
白馬岳山頂に到着。
昨日と違って、めっちゃ晴れてる!
下を眺めれば、一面の雲海です。
圧巻ですね!この眺め。
雲の絨毯を見ながらの稜線歩きは最高です。
行きはあんなにしんどい~!って思いながら歩いてきた道ですが、帰りはこの道がもっと続いてほしい、と思うくらいに足取りは軽くなり。本当に苦労して登ってきた甲斐があったというものです。
やがて遠くに、白馬大池が見えてきました。
山頂にいる人が今回は雷鳥見てないね、と話をしているのが聞こえてきました。
そういえば山小屋でも、そんな話を聞いたような。
白馬岳を歩いているからって、そこまで高確率で雷鳥に出会えるわけでもないのかもしれません。そういえば今日はまだ見てないし。
とまあ、ここまでは写真の通りの晴天だったのですが、小蓮華山を過ぎてからはどんどん雲が上がってきて、辺り一面ガスに包まれるように。
今まで遠方に向けていた目を下に落とすと、そこには様々な花が、そよ風に揺れていました。
辺り一面白い世界。
危なかった~。もう少し雲が上がってくるのが早かったら、行きも帰りも同じような景色になるところでした。まだ9時過ぎなのに。
真っ白の中、白馬大池に向かう途中、登山道の横で何やら気配を感じで横を見ると。
雷鳥が数羽いて、一匹は砂浴びに興じてました。
そーっと近づいて写真を撮っていると、他の一匹がすたたたっと、少し警戒しつつも1mくらい横を走りすぎていきました。
行きも帰りも雷鳥が見られてラッキーでした。
白馬大池山荘で、チャーハン(1,000円)とカップヌードル(700円)を食べて休憩した後は、蓮華温泉まで下りていきます。もう少し食べ物の種類あるかな~と思ってたけど、主食は、この二択でした。
ここからは景色もないし、そろそろ足も疲れてきて、ただの修行です。
しかも途中からは、とうとう雨まで降りだす始末…。
レインコートを着て、とぼとぼと下山。時間は午後2時。
疲れたー。
一旦車に荷物を置いて、着替えを持って蓮華温泉に。
蓮華温泉は野外にいくつか露天があって、そちらまでは歩いてまあまあかかるし混浴なので(水着で入れるけど)、今回は内湯だけの利用。
浴槽は8人くらい余裕で入れる広さ。泉質は単純泉で、肌に滑らせると都留氏としたお湯。かすかに白濁してるかな。
野天風呂はそれぞれ泉質が違うみたいなので、そちらも巡るのが通な楽しみ方だと思います。
近郊に住んでる人ならともかく東京からだと、ここで一泊して英気を養い、翌朝から元気よく登るのが正解ですね。そしたら前日に、外の温泉も楽しめるし。
で、こちらの蓮華温泉。なんとドライヤーがありません。持ち込みもダメだったような。自家発電だから、そのあたり厳しいみたいです。
タオルドライで済ませるしかないのですが、女の人は冬場とか気を付けたほうがいいですね。
そのあとは安全運転で無事に帰宅。
晴天の白馬岳の稜線歩きは筆舌に尽くしがたい絶景で、歩いているだけで気分が上がるような、素晴らしい山行になりました。
登山道の傍らに咲く花々も、こんなにたくさんの種類が咲いている中を今まで歩いたことがなかったので、ここにこんな花畑があるなんて、と、本当に驚きました。
またいつか、天気がいい時を狙って、登ってみたいです。
なかなかこの「天気がいい時を狙う」が、難易度高いんですけどね。
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